2022年9月 取材

高精度・高品質を追求しあらゆる案件でのBIM対応を実現する

これまで数多くの物流施設づくりに携わってきたフクダ・アンド・パートナーズ。その実績を支える設計部門では、多様な顧客ニーズにもスピーディーに対応できるよう、BIM(注1)設計を推進している。今後さらなるBIM活用を加速させていく上でカギを握るのがBIMシステム推進課の働きだ。同課で基盤構築に奔走する嘉数氏とBIM設計を推進する千石氏に、そのメリットや同社が目指すBIM設計の未来について聞いた。

(注1) BIM:Building Information Modelingの略。仮想空間上に構築した3Dモデルに、コストや仕上げ、管理情報などを付加したもの。建築のあらゆる工程で情報活用が可能

3D表現により素早く正確な対応が可能

BIM設計を導入するメリットについて教えてください。

千石 お客様にとってわかりやすいところで言うと、建物を立体的に表せることですね。BIMは仮想空間上に建物のモデルを製作することができて、出来上がった三次元のモデルから平面図や立面図を切り出すことが可能です。二次元の図面と違って建物がリアルに近い3Dで見えるので、設計の知識を持たない人も、建物をイメージしやすくなります。
また、設計変更を素早く正確に反映できるというメリットがあります。例えば、窓の位置ひとつを変更する場合にも、意匠、構造、設備の全図面をひとつずつ修正する必要がありますが、BIMでは構築した3Dモデル上でパーツを移動すれば、そこから変更内容が反映され、かつ整合性のある図面を切り出すことが可能です。実際にBIM設計を導入した案件がいくつもありますが、お客様、設計者、施工者ができました。
当社ではボリューム図(注2)からBIM設計を導入しましたが、さらにBIMに関するシステム環境を整え、設計業務のあらゆる場面でBIMを活用することを目指しています。その実現に向け、嘉数率いるBIMシステム推進課のメンバーが基盤づくりを行ってくれています。

(注2)ボリューム図:敷地内に建築可能な建物規模・形態を判断するために作成する簡易な設計図

BIMを最大限活用した設計体制の構築へ

「基盤づくり」とはどのようなことでしょうか。

嘉数 BIM設計の代表的なソフトとして「ArchiCAD」と「Revit」があります。当社では従前から「ArchiCAD」を導入しており、ボリューム図を中心としながら基本計画以降での活用を進めてきましたが、ここ数年の間に「Revit」を用いるケースが増えてきました。そこで、「ArchiCAD」のメリットを生かしつつ「Revit」にも対応可能なシステム環境を構築することで、今後はより多くの案件でBIM設計が導入できると考えたのです。

BIMで作成した物流施設の3Dモデル(左)と、F&Pのノウハウをもとに構築したランプウェイのパーツ(右)。

具体的にはどういったことを行いましたか。

嘉数 「Revit」を習得することはもちろんですが、設計知識のレベルを問わずに素早く作成できるよう、各種パーツと、その詳細情報を入力するテンプレートを整備しておくことも重要でした。特にランプウェイやドッグシェルターなどのような物流施設特有の部位については、構成するパーツを都度製作するのでは知識も時間も要します。そこで、当社が持つノウハウをもとに、物流施設づくりの規格に沿ったパーツやテンプレート設定を構築しておくことで、設計スキルを問わず扱えるようにしました。
取り組みから約1年が経ちましたが、これからはより多くの案件で活用できるよう運用チームに引き継いでいき、様々なサービスにおいてBIMを活用できるよう検討しようとしています。

改めてBIMを活用した今後の方針を聞かせてください。

千石 まず目指すところは、BIMで作成した3Dモデルを事業計画段階からお客様や関係者と共有し、「座談会」のような形での打合せを実現することですね。そうすることで初期段階から関係各所と具体的なイメージの共有ができて、素早い対応やスムーズな進行、意思決定に繋がると考えています。
将来的には全ての案件でBIMを活用し、設計から施工、維持管理まで一貫したデータ管理ができるようになることを目指します。それによって、お客様により高精度・高品質な設計サービスが提供できると思います。