第3回特集「技術者たちの挑戦」

物流施設設計の知識を結集しBIM活用でサービスの進化を目指す

創業から18年で累計約507万坪の物流施設作りに携わってきたフクダ・アンド・パートナーズ(以下、F&P)。その屋台骨を支える設計部門では、多様なニーズに対応すべく、業務の効率化とクオリティを追求する。設計業界で主流になりつつあるBIMの導入により、物流施設設計のエキスパートたちが目指すその先とは。
※2020年8月取材

知見と熱意で作り上げた物流施設設計用BIM

「線を描くのではなく、積み木のように建物の形を作っています。」そう語るのはチームリーダーである千石。BIM活用を命題に取組みを続ける一人だ。
チーム発足から約6年、メンバーは10名となった。今でこそボリューム図作成業務はBIMを使うことが当たり前となったが、発足当初BIM経験者は不在。わずか2名の社員で、BIMによる物流施設設計を開始した。当時パートナーとしてサポートする立場だった嘉数は、「BIMには興味を持つものの、技術取得のハードルが高く2D図面に戻ってしまう会社が多い中、F&P社員はとても熱心でした」と話す。千石と共に立ち上げを行った杉山は、「BIMをどう使いたいか問われても、知識もなく何ができるのかわからなかった。でも、わからなければ調べて、何でも質問しました。」と振り返る。

「BIM自体はOSの入っていないPCのようなもの」だと千石は表現する。というのも、システムを導入して操作を覚えるだけで必要な図面ができるわけではないからだ。BIMを有効に活用するには、テンプレートの構築が不可欠だった。BIMでは建物を構成する全ての部材に仕上げや寸法などの情報が含まれる。それらを組み合わせて庇やスロープ、ドックシェルターなど物流施設に必要な各種詳細を設定することで、初めて効率的に求める図面を作成できるのだ。千石と杉山はBIMとは何かを学びながら、いかに短時間で正確な図面を作れるかに熱を注ぎ、これまでの知見を活かしたF&P専用のテンプレートを完成させた。「苦労したけれど、物流施設づくりに特化している会社だからこそのテンプレートを構築できました。その結果、同様の品質の成果品を、誰でも短時間で作れるようになったのです」と杉山は語る。それから間もなく現在のチームメンバーも入社し、ここからBIMを使ったボリューム図設計が定着することとなった。

3Dの建物を構築し、2D図面を切り出せるBIM。何枚もの図面から建物イメージを固めていく従来の設計プロセスを覆すシステムだ

※ボリューム図:敷地内に建築可能な建物規模・形態を検討した結果を示す設計図書のこと
※テンプレート:効率的に作業を進め、目的の成果を出すために必要な総合的な作図環境設定のこと

F&Pだから目指せるさらなる可能性の追求

「図面になれないお客様にとって立体で見えるのはわかりやすいと好評ですね。設計の意図も伝わりやすいと感じます」と、BIM設計を担当する冨澤。未経験からBIMを使い始めた各メンバーも「視覚的に理解でき、感覚がつかみやすかった」と話す。立ち上げの二人も、BIM導入以前に比べ、教育時間が短縮されたと実感しているそうだ。また、BIMの恩恵は図面の正確さにも表れる。窓の位置ひとつ変えるにも、これまでは平面図や立面図等の図面をそれぞれ修正する必要があったが、BIMでは窓パーツを移動するだけで全ての図面が自動的に修正される。整合性のとれた図面が容易に出せることは時間短縮にもなり、その時間を計画検討の追求にあてられるのだという。メンバーに指示を出し業務を進める鈴木は、「設計の正確性とスピードは格段に増しました。元の設計ソフトには戻れないですね」と言うほどだ。

ボリューム図作成業務においてはBIMが主流となり、実際のプロジェクトへの導入も徐々に実績を重ねている。今まで以上に活用を進めるためには、社内はもちろん外部パートナー会社や建設会社などの協力を得るというハードルがある。しかし千石は、「多くのプロジェクトに導入し様々な場面でBIMを使うことで、お客様へ正確な情報をよりわかりやすくスピーディに提供できるはず。設計、工事監理、建物管理の全てに携わるF&Pだからこそ、その効果を最大限に引き出せると思っています」と可能性を確信する。「将来的には、設計のみならず施工や維持管理の場面でもBIMを活用し、もっとお客様に役立つサービスに進化させたいと考えています。またミャンマー子会社の人材育成も進め、物流施設づくりに於いてBIMと活用NO.1を目指したいですね」と目標を語った。